性感染症は、性器・口腔等による性的な接触で人から人へ感染します。 原因は、ウイルス・細菌・原虫・寄生虫などいろいろあり、感染している人の性器、泌尿器、肛門、口腔等と直接触れ合うことで感染します。
特徴
1. 症状がないことが多い。
2. 自覚症状があっても医療機関を受診しないこと等がある。
3. 何らかの性感染症に感染していると、他の性感染症にも感染しやすい。
4. 性感染症(HIVを除く。)は、きちんと治療すれば治る。
5. 治療せず放置すると、不妊症などの原因になることもある。
予防 感染している人の体液(血液、精液、膣分泌液等)、粘膜又は病変がある皮膚等に直接触れないようにする。 コンドームを正しく使うこと。
検査 検査を受けることで、自分の感染の有無が判明します。
治療
男性なら泌尿器科、女性なら産婦人科に相談しましょう。
湿疹等の皮膚症状なら皮膚科、
のどの違和感があれば耳鼻咽喉科を受診しましょう。
早く治療を始めることで、治療期間も短く、合併症等の心配もなくなります。
また、パートナーと一緒に治療しましょう。
(パートナーから同じ性感染症を何度も感染することを防ぐために)
性感染症には、たくさんの種類があります。代表的な性感染症を和歌山市保健所における感染症の発生状況とあわせて紹介します。
梅毒は、診断後7日以内に、診断した医師から保健所に報告が必要な性感染症です。
和歌山市保健所管内の梅毒発生届出数は、令和4年は19件と過去10年で最多でしたが、令和5年は37件と、さらに倍増しています。また発生届出数を男女別で見ると、全国的には男性20代〜50代、女性は20代が突出して増えています。和歌山市の過去5年の発生届出数を男女別で見ると、女性では10〜40代に多く、男性では幅広い年代で感染が広がっています。
性感染症は、1つの性感染症に感染すると他の性感染症の感染リスクも上がるという特徴があります。梅毒が増えると、数年後にHIVが増えるとも言われており、今後の動向がとても気になります。
梅毒は、慢性の感染症であり、お腹の赤ちゃんにも感染し、家族・子どもに与える影響が大きい性感染症です。感染してから、発病までが長く、初期(第T期)には、症状のでない不顕性梅毒も増えています。セックスだけでなく、キスやペッティングでも感染する可能性があり、感染した人の血液からも感染します。
病原体:梅毒トレポネーマ
潜伏期:10〜90日(通常3週間程度)
症 状:
第T期(感染から3か月まで) 感染した場所(性器又は口など)に赤みのあるしこり、腫れもの(無痛) 鼠径リンパ節(太ももの付け根)がはれる(グリグリ)。 放っておくと症状は消える。しかし、病原体は体内で増え続けている。
第U期(感染後3か月から3年まで)
いろいろ皮膚症状がでる(バラ疹、丘疹、白斑、脱毛など)。
1年以内に症状が消える。
注意:症状がなくても、病原体は体内で増え続けているので、人に感染させやすい。
第V期(感染後3年から10年まで) 皮膚や内臓、骨に病気が拡がる。
第W期(感染後10年以後) 心臓・血管・中枢神経(脳)などに障害がでて、日常生活は困難になる。治療が難しい。
治 療:抗生物質(ペニシリンなど)での長期治療(1か月程度の飲み薬、注射など) 完治をめざして、医師の指示に従って根気よく治療すること。
和歌山市においても全国同様増加しています。
梅毒に感染しているかどうかは血液検査でわかります。
和歌山市保健所では、HIV抗体検査時に希望者に対して梅毒検査も実施しています。
日本で最も多い性感染症です。自覚症状がない場合が多く、感染に気付かないことがよくあります。感染に気付かず不妊症の原因になることもあります。和歌山市でも毎年100件以上の発生届があり、特に20代男女での届出が多いです。また男女別の届出数を全国と比較すると、男性の届出が女性と比較してかなり多い傾向にあることが分かります。
病原体:クラミジア・トラコマチス
潜伏期:1〜3週間 10日以上が多い
(女 性)軽い生理痛のような痛み
(男 性)軽い排尿痛(ヒリヒリ、違和感)、ペニスからの膿
(新生児)母が感染していると、生まれるときに感染し、結膜炎又は肺炎をおこします。
治療:抗生物質(テトラサイクリン、マクロライド、ニューキノロンなど)が有効
※1回の服用で完治できる薬もあります。医師にご相談ください。
和歌山市内の動向を把握するため、産婦人科又は泌尿器科などのいくつかの医療機関(定点医療機関)から、国が定めた種類の性感染症を診断した際に件数を報告してもらっています。
その報告によると、全般的に増加傾向ですが、特に性器クラミジアの増加が顕著です。
いずれも診断がついた人数ですので、感染に気づいていない人又は検査を受けていない人を含めるともっと多くの方々が感染している可能性もあります。
原因のウイルスには口唇に多いT型と陰部に多いU型があります。T型は、陰部にも感染します。疲れていると再発しやすく、完治は難しいようです。
病原体:単純ヘルペスウイルスU型・T型
潜伏期:2〜10日
症 状:男女とも外性器の皮膚・粘膜に1〜3oの水泡ができ、破れると潰瘍になります。
ピリピリ、ズキズキ痛み、発熱、排尿痛もあります。
(新生児)母が感染していると、出産時に感染し、新生児の脳炎、肺炎の原因に。死産になることもあります。
治 療:抗ウイルス薬、抗炎症薬、鎮痛薬などを根気よく、医師の指示で続けましょう。
(塗り薬と飲み薬などがあります。)
接触の仕方によって、性器、尿道、直腸、咽頭、眼などの粘膜に感染し、化膿します。
病原体:淋菌
潜伏期:2〜10日(3〜7日が多い)
症 状:性器の炎症や排膿(膿がでる)。菌が血液に入ると関節炎にもなります。
咽頭に感染すると、ほとんど無症状で気づかないことが多く、不妊症の原因になることもあります。
(女 性)黄色の濃いおりものや、尿からの膿
(男 性)ペニスの先からの膿、下着のよごれで気づく。包茎では感染しやすい。
(新生児)母が感染していると、出産時に感染し、結膜炎・失明の原因に。
治 療:抗生物質が効きにくい淋病が多い。必ず医師の指示に従って治療しましょう。
ほかの性感染症にも感染していることが多いのが特徴といわれています。カリフラワー状のイボができる。
病原体:ヒト乳頭腫ウイルス
潜伏期:3か月程度
症 状:男女とも外性器(亀頭/陰茎)や尿道近くの皮膚にイボが増えます。あまり、痛みはありません。
治 療:軟膏を塗る。手術(凍結、レーザー、電気メス)で切除。
感染すると女性では尿に病原体(原虫)がよくみられます。男性では、尿には病原体があまり出ないので、診断が難しいようです。湿ったタオルや下着などからも感染することがあります。
病原体:トリコモナス原虫
潜伏期:1〜2週間
症 状:陰部のかゆみ
(女 性)悪臭のあるおりもの、外陰部が赤くただれる。
(男 性)排尿痛
治 療:膣座薬や飲み薬
病原体:ヒゼンダニ(肌に直接触れることで感染)
潜伏期:約1か月
症 状:下腹部やペニス、乳房の下、指の間などの皮膚にブツブツや小さいイボができ、かゆみがひどい
治 療:塗り薬や飲み薬、入浴剤など
衣類や寝具は、こまめに交換し、洗濯する等、清潔を保つ。
注意:抗生物質は症状を悪化させるので、自己判断で服用しないこと!
病原体:毛ジラミ
潜伏期:潜伏期はなく、うつったらすぐ
症 状:頭髪ではなく陰毛や腋毛、胸毛などにつき、皮膚から血を吸う。かゆみがひどい。
治 療:専用のシャンプーやボディソープを使って髪や身体を洗う。シラミのついた衣類や寝具、タオルなどは熱湯で浸してから洗濯する。
B型肝炎ウイルスは、血液、精液、膣分泌液、唾液に存在し、HIV(エイズを引き起こすウイルスの名称)の1,000倍も感染しやすいといわれています。月経中、肛門性交、器具等を使うことで出血を伴う性行為で感染リスクは高くなります。
B型肺炎には、一過性感染と持続感染があります。
免疫機能の働きによりB型肝炎ウイルスを体外に排出し一時的な感染で終わることを「一過性感染」と言います。成人で感染した場合、一過性感染が多いです。
一方で、免疫機能の低下によりB型肝炎ウイルスを排出できず体内に残ってしまうことを「持続感染」と言います。
B型肝炎ウイルス感染者の約10〜20%が慢性肝炎に進行し、その後肝硬変、肝がんを発生する人もいます。
詳しくは、「肝炎」「肝炎.net」をご参照ください。