和歌山市感染症情報センター

今、注目の感染症
2009年

【5類感染症:定点把握】 第52週(12月21日〜12月27日)

2009年第52週の和歌山市の5類感染症(定点把握)の発生状況です。

2009年では、第4週331件が第一のピーク、第11週497件が第二のピークとなり、この時には今シーズン初の警報が発令されました。しかし、以後急速に減少し、第21週2件、第22週1件の報告(いずれもB型インフルエンザ)を最後に、第23週以降の報告はありません。

[新型インフルエンザの流行状況]
本年5月には、新型インフルエンザ(H1N1)の国内発生例があり、5月27日には和歌山市内で初めて新型インフルエンザ感染者が確認されました。6月後半以降は、全国的に感染者の確認が続き、集団感染事例も多数発生しました。第33週には、定点当たり1.69と増加し、流行の入口に達したと国は発表しました。
和歌山市でも、第35週に定点当たり報告数1.33と全国に遅れて流行が始まり、以後増加し、第42週で15.67と注意報発令されました。その後も増加を続け、第46週には31.4で警報発令となり、第47週はさらに35.8と増加しピークとなりました。第48週以降はやや減少傾向にあり、第52週では20.73となっていますが、依然流行が続いています。また第45週以降の特徴としては、これまで10-14歳の報告が最も多かったのが、5-9歳での報告が最も多くなり、低年齢化の傾向が明確です。市内の小・中学校を中心に保育所・幼稚園・高校等でも学級閉鎖、学校閉鎖が相次ぎましたが、冬休みに入り、感染拡大は落ち着くものと思われますが、学校再開後の状況に注意が必要です。

[新型インフルエンザの感染予防]
また、新型インフルエンザの予防にも、日頃のインフルエンザ予防策が有効です。普段から手洗いの励行による感染予防を心がけましょう。また、咳・くしゃみが出たら他の人にうつさないためにマスクを着用しましょう(「咳エチケット」)。医療機関を受診する際には、必ず、医療機関への事前連絡とマスク着用を守りましょう。『電話で連絡・マスクで受診』

[新型インフルエンザワクチン]
 新型インフルエンザに対するワクチン接種は、10月19日から医療従事者への接種が始まりました。また、妊婦及び基礎疾患を有する方のうち最優先の方への接種が10月末から可能となり、11月16日から本格的に始まりました。
さらに、小児の感染例、重症例、死亡例が増加していることから、国は、基礎疾患のない小児への接種を前倒しするよう都道府県へ求めました。和歌山県でも、11月16日から、基礎疾患のない1歳〜就学前の幼児、小学校3年生までを接種対象に拡げました。さらに、小学校高学年、中学生、高校生、0歳児の保護者等の接種の年末年始から開始されました。しかし、各医療機関 特に小児科では、どこもインフルエンザその他の疾患の診療と季節性インフルエンザワクチン、新型インフルエンザワクチンへの対応と、大変な多忙な状況に陥っています。 電話が殺到すると診療にも影響します。ワクチンは今後も順次供給されますので、市民の皆様のご理解とご協力をお願いいたします。
また、和歌山市医師会では小児を対象に集団接種を実施しています。
新型インフルエンザワクチンは、重症化防止と死亡者の減少を目的に接種されるものです。ワクチンの有効性と安全性(副作用等)を十分確認してください。

[季節性インフルエンザワクチン]

季節性インフルエンザに関しては例年通り65歳以上の方、あるいは60〜65歳の方で心臓、腎臓、呼吸器などに重篤な基礎疾患をもつ方を除いては任意接種になりますが、本格的シーズンとなる12月までの接種が勧められます。毎年ワクチン接種するよう心がけましょう。ただし、今シーズンは、新型インフルエンザワクチンの製造のため、季節性インフルエンザワクチンも製造量が減少しています。高齢者の接種を優先できるようご理解とご協力をお願いします。
ひろげるなインフルエンザ ひろげよう咳エチケット
 

「感染性胃腸炎」は小児に好発するロタウィルス腸炎やノロウィルス感染症にみられるように,冬季〜春先に大流行します。2008年は前年と類似の推移を示し、第52週には207件と急増し警報発令となりました。2009年に入ってからは90〜100件前後で推移し、第15週の161件をピークに減少傾向です。その後、例年より少ない状況が続いていますが、第51週は40件、第52週64件と増加傾向にあります。今後、さらなる増加が危惧されます。年齢別では、3〜6歳を中心に報告が見られます。

ウイルス性腸炎について注意は必要ですが、サルモネラや腸炎ビブリオ、キャンピロバクターや黄色ブドウ球菌、旅行者下痢症(大腸菌感染が多い)などの細菌性腸炎にも注意が必要です。これらは主に食中毒として発生します。調理前後や食事前には「手洗い」を励行し、食品の冷所保存を心がけ、長期保存は避けるなど、日常生活での予防を心がけて下さい。また嘔吐・下痢などの症状があるときには、十分に水分補給をし、症状がひどい場合には医療機関を受診して下さい。

RSウイルス感染症の流行は毎年冬で、特に乳幼児(特に6ヶ月未満)に中心にみられる肺炎、気管支炎などの急性下気道感染症です。ロタウイルス腸炎と並んで、冬季に流行する乳幼児に多い感染症です。乳幼児で鼻水、咳、発熱などの風邪症状に加えヒューヒュー、ゼーゼーというような「喘鳴」が聞かれる場合は、医療機関を受診するようにしましょう。
2009年初めでは、第2週11件の報告があり、以後、10件以内の報告がしばらく続きましたが、大きな増加はありませんでした。
今シーズンでは、第41週以降報告が続いていましたが、第51週10件から第52週22件と急増しています。年齢別では、0歳児6件、1歳児6件、2歳児4件、3歳・4歳・5歳で2件です。今後更なる増加も危惧され、十分な注意が必要です。

うがい、手洗いによる感染予防を行いましょう。また、初発時は発症して1週〜10日間ほどはウイルスが気道分泌物内に存在しており、手や持ち物を介しての集団発生も認められるため、感染者がいる場合は接触を避けることも重要です。

2009年は比較的少ない状況で推移していましたが、例年の推移に沿いながら増加傾向にあります。第52週では30件の報告がありました。年齢別では、1歳〜3歳を中心に報告がみられます。しばらく流行期が続きますので、注意しましょう。


流行性耳下腺炎は約4年ごとに増える傾向がみられています。
和歌山市では、2006年では第10週をピークに流行が続きましたが、2007年、2008年とも大きな流行なく少数報告にとどまっています。
2009年は第21週19件以降増加傾向で、第31週35件となり注意報が発令されました。その後は第32週の37件をピークに減少に転じています。第52週5件で終息と思われます。

 本感染症は、髄膜炎、精巣炎、難聴、膵炎といった合併症があります。熱が続く場合、頭痛、吐き気がある場合、難聴、腹痛がある場合などは医療機関を早めに受診しましょう。抗ウイルス薬は開発されておらず、ワクチンの予防(任意接種)が効果的です。2〜5歳が好発年齢なので、1歳〜集団生活を始める前までの接種が勧められます。

2009年では、ほぼ2008年同様第8週前後と第22週前後に2つのピークを形成しています。以後、減少傾向で、第32週以降は0?4件で推移していますが、第52週では9件の報告がありました。年齢別では、0-5月・3歳・5歳・6歳で1件ずつ、7歳2件、8歳3件でした。今後、徐々に増加傾向になると思われます。

本感染症では、治療が十分に行われないと劇症型へ重症化したり、腎炎やリウマチ熱など重篤な合併症を発症したりすることがあるので、早期診断、適切な治療(抗生剤投与)が必要です。劇症型感染の発症機序は明らかでなく、有効な予防対策や拡大防止策はありません。突然の発熱、咽頭痛、筋肉痛、発疹などがある場合、早期受診を心がけましょう。一般的には小児に多いですが、成人でも発症します。


【麻しん・風しん】 (第5類感染症全数把握) 

麻しん・風しんが、2008年1月1日より全数把握疾患となりました。
麻しんは2008年で計23件、風疹は計2件の報告でした。
2009年では、麻疹が第16週に初めての報告があり、第17週に2件、第18週に1件、21週に1件、第24週に1件と報告が続いています。
風疹は、第17週に1件の報告がありました。

<和歌山市の状況>
風疹は,和歌山市内では,定点報告で、2004年7件,2005年4件でした。以降、和歌山県の全数報告事業でも報告は0でした。
2008年は、第3週(16歳)、第22週(70歳代)の計2件の報告でした。

 2009年は、第17週(4月22日現在)で初めての報告。11歳です。単抗原ワクチン接種済みです。

<和歌山市の状況>
2007年は、第19〜23週にかけて、計10件報告がありました。

2008年は、第10〜46週に計23件で、年齢別の届出状況は次のとおりです。
  年齢区分
0歳 1歳 5歳 10歳 15歳 20歳 25歳 30歳 35歳 40歳
2008年 3/3〜11/10 0 6 2 7 6 0 0 1 0 1 23


ワクチン接種歴あり、修飾麻しんの診断が3例、既往歴あり1例を含んでいます。
「麻しん」と臨床診断されるまで、内科や皮膚科等複数の医療機関を受診している事例もあり、診断精度の向上が求められます。
2009年では、第16週に初めて報告があり、その後も第17週に2件、第18週に1件、第21週に1件、第24週1件、の報告がありました。4例は1歳児で1例は2歳児でワクチン接種後です。診断は臨床診断1例、血清診断3例です。ウイルスPCR検査はいずれも陰性でした。
疫学調査の結果では、5者の接点は見つかっていません。

 

<麻しんの特徴>
麻しんに対して免疫を持たない者が感染した場合、10日前後の潜伏期を経て発症し、発熱・咳・鼻水・眼脂・結膜充血等のカタル期(2〜4日)、発疹期(3〜5日)、回復期へと続いていくウイルス感染症です。感染期間としては、カタル期から発疹後4〜5日までウイルスの排出の可能性があります。
なお、患者との接触から3日以内であれば、麻しんワクチンの接種により感染を予防できる可能性があります。早期診断と接触者への迅速な対応が重要です。


<市民のみなさま・特に子育て中の保護者のみなさまへのメッセージ>
麻しんの予防には、予防接種の徹底が何より重要です。【Stop 麻しん・風しん】を参照。お子様が満1歳になりましたら先ず麻しんワクチン(=麻しん・風しん混合ワクチン)を接種しましょう。また、就学前の1年間の2回目の接種も忘れずうけましょう。
平成20年度から5年間、中学1年生及び高校3年生相当の方も麻しん風しん混合ワクチンの接種対象となりました。対象者の方が接種できる期間は、それぞれ1年間のみです。早めに接種しましょう。

<若年成人の方へのメッセージ>
ワクチン接種率が向上し,罹患者は減ったものの,接種漏れなどで免疫のない人がかかると重症化する恐れがあります。現在の20歳代及び10歳代後半の若年者は、ワクチンの接種率が低く、また、接種者でも接種から10年以上が経過し抗体価が低下している場合もあるため、感染者が多くでています。接種歴のない方や抗体価が低い場合は、ワクチン接種が必要です。
機会を見て、ワクチン接種(任意接種)をうけましょう。

また、発熱等の症状があった場合には、医療機関を受診し、診断をうけましょう。発熱等があるときに無理して職場や学校等へ行くことは、感染性の疾患であった場合、感染拡大につながりますので控えてください。

Stop 麻しん・風しん = 「予防接種」は最も有効で積極的な予防法!!


麻しん・風しんの予防接種は,平成18年4月1日より,次のとおりです。
第1期 満1歳〜満2歳になるまでの間に1回
第2期 満5歳〜7歳未満で,小学校入学日の1年前の日から小学校入学前日までの間に1回

いずれも,「麻しん風しん混合ワクチン」を接種しますが,いずれか一方の既往歴がある場合等には,「麻しん単抗原ワクチン」もしくは「風しん単抗原ワクチン」を接種します。1回接種では、将来抗体価の低下が危惧されます。目標は95%以上。第2期を忘れず接種しましょう。第2期の接種率は平成18年度71%、平成19年度は88%でした。平成20年度は2月末現在で69%と低迷しています。
「麻しん排除計画」の一環として、平成20年4月1日から平成25年3月31日までの5年間、麻しん・風しんの予防接種 第3期・第4期が実施されます。

第3期 中学1年生で 「麻しん風しん混合ワクチン」を1回接種
第4期 高校3年生相当で 「麻しん風しん混合ワクチン」を1回接種


いずれも95%以上の接種率を目標とし、麻しん・風しんの排除を目指しています。
このことにより 平成2年4月2日以降に出生したものは、高校卒業までに麻しん・風しんワクチンの2回接種が完了することになります。
しかし、平成20年度の接種率は、2月末現在で、第3期69%、第4期61%と、目標よりかなり低い数値となっています。

風しんと先天性風しん症候群の予防について


ワクチン未接種で罹患したこともない女性が妊娠初期に風疹に罹患したときにウィルスが胎児に感染し,出生児に「先天性風疹症候群」を起こすことがあります。この先天性風疹症候群は「感音性難聴」,「白内障または緑内障」,「心疾患」が3主徴で,通常妊娠第16週までに起ることが殆どです。
 感染症法では,「先天性風しん症候群」は全数把握となっていますが,いままで1年に全国で1件以内だったのが,2004年では,9件の報告がありました。
和歌山市内では1999年以降,「先天性風疹症候群」の報告はありません。
 また,「風疹」は,和歌山市内では,2004年7件,2005年4件の報告でした。2008年第3週で5年ぶりに1件の報告があり年間で2件でした。
非流行時から妊娠可能年齢の女性の積極的な予防接種が重要です。また,流行阻止のために,ワクチン接種歴がなく,罹患もしていない人は,男女とも予防接種(任意接種)を受けることが望まれます。
 なお,妊娠可能な女性については,ワクチン接種後2か月間の避妊が必要です。


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