2009年第24週の和歌山市の5類感染症(定点把握)の発生状況です。
インフルエンザは第11週をピークに急速に減少し第21週に2件、第22週に1件報告がありましたが第23週以降は報告ありません。
感染性胃腸炎は47件とやや増加しました。
2008年末より流行しはじめ、当時は注意報が発令されました。
2009年では、第4週331件が第一のピーク、第11週497件が第二のピークとなり、この時には今シーズン初の警報が発令されました。しかし、以後急速に減少し、第21週2件、第22週1件の報告(いずれもB型インフルエンザ)を最後に、第23週以降の報告はありません。
本年5月には、新型インフルエンザ(H1N1)の国内発生例があり、5月27日には和歌山市内で初めて新型インフルエンザ感染者が確認されました。今季のインフルエンザの流行は一時終息したと思われますが、今後、秋口にかけて再流行する可能性があります。その際、季節性インフルエンザとの鑑別診断にも注意が必要です。まん延国への渡航歴や患者との接触歴の有無に注目してください。また、新型インフルエンザの予防にも、日頃のインフルエンザ予防策が有効です。普段から手洗いの励行による感染予防を心がけましょう。また、咳・くしゃみが出たら他の人にうつさないためにマスクを着用しましょう(「咳エチケット」)。新型インフルエンザへの感染に関する相談は、和歌山市新型インフルエンザ発熱相談センターへお電話ください。
流行性耳下腺炎は約4年ごとに増える傾向がみられています。
和歌山市では、2006年では第10週をピークに流行が続きましたが、2007年、2008年とも大きな流行なく少数報告にとどまっています。
2009年も10件以内の報告が続いていましたが、第21週19件、第22週14件、第23週17件、第24週24件、第25週24件と増加傾向です。過去2年間流行がないので、今後の動向に注目です。
「感染性胃腸炎」は小児に好発するロタウィルス腸炎やノロウィルス感染症にみられるように,冬季〜春先に大流行します。2008年は前年と類似の推移を示し、第52週には207件と急増し警報発令となりました。2009年に入ってからは90〜100件前後で推移し、第15週の161件をピークに減少傾向となり、第25週は38件となっています。年齢別では、乳幼児に集中していますが、20歳代の報告もあります。
夏季に入りこれらのウイルス性腸炎は減少していますが、サルモネラや腸炎ビブリオ、キャンピロバクターや黄色ブドウ球菌、旅行者下痢症(大腸菌感染が多い)などの細菌性腸炎には注意が必要です。これらは主に食中毒として発生します。調理前後や食事前には「手洗い」を励行し、食品の冷所保存を心がけ、長期保存は避けるなど、日常生活での予防を心がけて下さい。また嘔吐・下痢などの症状があるときには、十分に水分補給をし、症状がひどい場合には医療機関を受診して下さい。2008年は、第5週に27件に急増、その後徐々に減少し10件前後で推移していたものの、第20週頃より再び20件前後の報告が続いた後、第25週より減少し、例年通り二峰性のピークを描きました。また、冬場にはいり、第50週には14件と増加、以後8件、9件でした。
2009年では、徐々に増加し、第7週20件と最も多く、以後、減少傾向でしたが第20週は16件、第21週18件、第22週23件、第23週14件、第24週20件、第25週9件でした。ほぼ昨年同様の動向で、今後減少が予想されます。
2008年末では、第51週40件が、流行のピークとなっていました。
2009年では、第2週47件をピークに、第3週以降は減少、第10週33件とやや増加しましたが、以後20件前後でほぼ横ばいです。第20週19件、第21週18件、第22週16件、第23週16件、第24週11件、第25週9件でした。
麻しん・風しんが、2008年1月1日より全数把握疾患となりました。
麻しんは2008年で計23件、風疹は計2件の報告でした。
2009年では、麻疹が第16週に初めての報告があり、第17週に2件、第18週に1件、21週に1件、第24週に1件と報告が続いています。
風疹は、第17週に1件の報告がありました。
第25週は共に報告はありませんが、いずれも流行期を迎えていますので、今後の動向に十分注意が必要です。
<和歌山市の状況>
風疹は,和歌山市内では,定点報告で、2004年7件,2005年4件でした。以降、和歌山県の全数報告事業でも報告は0でした。
2008年は、第3週(16歳)、第22週(70歳代)の計2件の報告でした。
2009年は、第17週(4月22日現在)で初めての報告。11歳です。単抗原ワクチン接種済みです。
<和歌山市の状況>
2007年は、第19〜23週にかけて、計10件報告がありました。
年齢区分 | |||||||||||
0歳 | 1歳 | 5歳 | 10歳 | 15歳 | 20歳 | 25歳 | 30歳 | 35歳 | 40歳 | 計 | |
2008年 3/3〜11/10 | 0 | 6 | 2 | 7 | 6 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 23 |
ワクチン接種歴あり、修飾麻しんの診断が3例、既往歴あり1例を含んでいます。
「麻しん」と臨床診断されるまで、内科や皮膚科等複数の医療機関を受診している事例もあり、診断精度の向上が求められます。
2009年では、第16週に初めての報告例です。第17週に2件、第18週に1件、第21週に1件報告あり、第24週1件報告がありました。4例は1歳児で1例は2歳児でワクチン接種後です。診断は臨床診断1例、血清診断3例です。ウイルスPCRはいずれも陰性でした。
<麻しんの特徴等>
麻しんに対して免疫を持たない者が感染した場合、10日前後の潜伏期を経て発症し、発熱・咳・鼻水・眼脂・結膜充血等のカタル期(2〜4日)、発疹期(3〜5日)、回復期へと続いていきます。感染期間としては、カタル期から発疹後4〜5日までウィルスの排出の可能性があります。
なお、患者との接触から3日以内であれば、麻しんワクチンの接種により感染を予防できる可能性があります。早期診断と接触者への迅速な対応が重要です。
<市民のみなさま・特に子育て中の保護者のみなさまへのメッセージ>
麻しんの予防には、予防接種の徹底が何より重要です。【Stop 麻しん・風しん】を参照。お子様が満1歳になりましたら先ず麻しんワクチン(=麻しん・風しん混合ワクチン)を接種しましょう。また、就学前の1年間の2回目の接種も忘れずうけましょう。
平成20年度から5年間、中学1年生及び高校3年生相当の方も麻しん風しん混合ワクチンの接種対象となりました。対象者の方が接種できる期間は、それぞれ1年間のみです。早めに接種しましょう。
<若年成人の方へのメッセージ>
ワクチン接種率が向上し,罹患者は減ったものの,接種漏れなどで免疫のない人がかかると重症化する恐れがあります。現在の20歳代及び10歳代後半の若年者は、ワクチンの接種率が低く、また、接種者でも接種から10年以上が経過しているため、抗体価が低下して場合もあるため、感染者が多くでています。接種歴のない方や抗体価が低い場合は、ワクチン接種が必要です。
機会を見て、ワクチン接種(任意接種)をうけましょう。
Stop 麻しん・風しん = 「予防接種」は最も有効で積極的な予防法!!
麻しん・風しんの予防接種は,平成18年4月1日より,次のとおりです。
第1期 満1歳〜満2歳になるまでの間に1回
第2期 満5歳〜7歳未満で,小学校入学日の1年前の日から小学校入学前日までの間に1回
いずれも,「麻しん風しん混合ワクチン」を接種しますが,いずれか一方の既往歴がある場合等には,「麻しん単抗原ワクチン」もしくは「風しん単抗原ワクチン」を接種します。1回接種では、将来抗体価の低下が危惧されます。目標は95%以上。第2期を忘れず接種しましょう。第2期の接種率は平成18年度71%、平成19年度は88%でした。平成20年度は2月末現在で69%と低迷しています。
「麻しん排除計画」の一環として、平成20年4月1日から平成25年3月31日までの5年間、麻しん・風しんの予防接種 第3期・第4期が実施されます。
第3期 中学1年生で 「麻しん風しん混合ワクチン」を1回接種
第4期 高校3年生相当で 「麻しん風しん混合ワクチン」を1回接種
いずれも95%以上の接種率を目標とし、麻しん・風しんの排除を目指しています。
このことにより 平成2年4月2日以降に出生したものは、高校卒業までに麻しん・風しんワクチンの2回接種が完了することになります。
しかし、平成20年度の接種率は、2月末現在で、第3期69%、第4期61%と、目標よりかなり低い数値となっています。
風しんと先天性風しん症候群の予防について
ワクチン未接種で罹患したこともない女性が妊娠初期に風疹に罹患したときにウィルスが胎児に感染し,出生児に「先天性風疹症候群」を起こすことがあります。この先天性風疹症候群は「感音性難聴」,「白内障または緑内障」,「心疾患」が3主徴で,通常妊娠第16週までに起ることが殆どです。
感染症法では,「先天性風しん症候群」は全数把握となっていますが,いままで1年に全国で1件以内だったのが,2004年では,9件の報告がありました。
和歌山市内では1999年以降,「先天性風疹症候群」の報告はありません。
また,「風疹」は,和歌山市内では,2004年7件,2005年4件の報告でした。2008年第3週で5年ぶりに1件の報告があり年間で2件でした。
非流行時から妊娠可能年齢の女性の積極的な予防接種が重要です。また,流行阻止のために,ワクチン接種歴がなく,罹患もしていない人は,男女とも予防接種(任意接種)を受けることが望まれます。
なお,妊娠可能な女性については,ワクチン接種後2か月間の避妊が必要です。