和歌山市感染症情報センター

Wakayama City Infectious Disease Surveilance Center
ノロウイルスによる感染性胃腸炎の予防に関するQ&A
ノロウイルスってどんなウイルスですか?
 ノロウイルス(Noro Virues)は直径が25nm〜35nm(1nmは1mmの100万分の1)という電子顕微鏡でしか見えない小さい球形のウイルスです。「小型球形ウイルス」 「ノーウォーク(様)ウイルス」と呼ばれることもあります。
 ノロウイルスは以前から存在していたと考えられますが,ウイルスの性質が明らかになったのは近年であり,平成9年より新たに食中毒の原因物質に加えられるようになりました。
Q2 ノロウイルスはどうやって感染するのですか?
 このウイルスの感染経路はほとんどが経口感染で,次のような感染様式があると考えられています。また家庭や共同生活施設などヒト同士の接触する機会が多いところでヒトからヒトへ直接感染するケースもあるといわれています。
  1. 汚染されていた貝類を,生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合,特にカキなどの2枚貝が感染源になることが多い。
  2. 食品取扱者(食品の製造等に従事する者,飲食店における調理従事者,家庭で調理を行う者などが含まれます。)が感染しており,その者を介して汚染した食品を食べた場合
  3. 患者のふん便や吐ぶつから二次感染した場合
どんな時期にノロウイルス食中毒は発生しやすいのですか?
 我が国における月別の発生状況をみると,一年を通して発生はみられますが11月くらいから発生件数は増加しはじめ,1〜2月が発生のピークになる傾向があります。
ノロウイルスに感染するとどんな症状になるのですか?
 潜伏期間(感染から発症までの時間)は24〜48時間で,主症状は吐き気,嘔吐,下痢,腹痛であり,発熱は軽度です。通常,これら症状が1〜2日続いた後治癒し,後遺症もありません。
 また感染しても発症しない場合や軽い風邪のような症状の場合もあります。しかし,ひどい下痢が続いた場合脱水症状になることもあり,入院・点滴などの処置が必要になります。

☆ 免疫力の弱い幼児や高齢者などでは症状が重くなることがあり,注意が必要です。

発症した場合の治療法はありますか?
 現在、このウイルスに効果のある抗ウイルス剤はありません。このため,通常脱水症状がひどい場合には輸液を行うなどの対症療法が行われます。
予防のための手洗いはどのようにすればいいのですか?
 食品取扱者は常に爪を短く切って,指輪等をはずし,石けんを十分泡立て,ブラシなどを使用して手指を洗浄します。すすぎは温水による流水で十分に行います。石けん自体にはノロウイルスを直接失活化する効果はありませんが,手の脂肪等の汚れを落とすことにより、ウイルスを手指から剥がれやすくする効果があります。
調理台や調理器具はどのように殺菌したらいいのですか?
 ノロウイルスの失活化には,エタノールや逆性石鹸はあまり効果がありません。ノロウイルスを完全に失活化する方法には,次亜塩素酸ナトリウムによるか,加熱しかありません。調理器具等は洗剤などを使用し十分に洗浄した後,次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度200ppm)で浸すように拭くことでウイルスを失活化できます。
 また,まな板,包丁,へら,食器,ふきん,タオル等は熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱が有効です。
患者のふん便や吐ぶつを処理する際に注意することはありますか?
 患者の吐ぶつやふん便には大量のウイルスが存在し感染源となりうるので,その処理には十分注意する必要があります。 患者の吐ぶつやふん便を処理するときには,使い捨てのマスクと手袋を着用し汚物中のウイルスが飛び散らないように,ふん便,吐ぶつをペーパータオル等で静かに拭き取ります。おむつ等はできる限り揺らさないように取り扱います。
 ふん便や吐ぶつが付着した床等は,次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200ppm)で浸すように拭き取ります。拭き取りに使用したペーパータオル等は,次亜塩素酸ナトリウムを希釈したもの(塩素濃度約1000ppm)に5〜10分間つけた後,処分します。
 また,ノロウイルスは乾燥すると容易に空中に漂い,これが口に入って感染することがあるので,吐ぶつやふん便は乾燥させないことが感染防止に重要です。
 11月頃から1月の間に,乳幼児の間でノロウイルスによる急性胃腸炎が流行します。この時期の乳幼児の下痢便および吐ぶつには,ノロウイルスが大量に含まれていることがありますので,おむつ等の取扱いには十分注意しましょう。
 また,このウイルスは下痢等の症状がなくなっても,通常では2週間程度ウイルスの排泄が続くことがあるので,症状が改善した後も,しばらくの間は便の処理には十分注意しましょう。
食品取扱者の衛生管理で注意すべき点はどこでしょうか?
 ノロウイルスによる食中毒では,患者のふん便や吐ぶつがヒトを介して食品を汚染したために発生したという事例も少なくありません。ノロウイルスは少ないウイルス量で感染するので,ごくわずかなふん便や吐ぶつが付着した食品でも多くのヒトを発症させるとされています。下痢やおう吐等の症状がある方は,食品を直接取り扱う作業をさせないようにすべきです。
 また,このウイルスは下痢等の症状がなくなっても,通常では2週間程度ウイルスの排泄が続くことがあるので,症状が改善した後も,しばらくの間は食品を直接取り扱う作業をさせないようにすべきです。
さらに,このウイルスは感染していても症状を示さない不顕性感染も認められていることから,食品取扱者は,その生活環境においてノロウイルスに感染しないような自覚を持つことが重要です。たとえば,家庭の中に小児や介護を要する高齢者がおり,下痢・嘔吐等の症状を呈している場合は,その汚物処理を含め,トイレ・風呂等を衛生的に保つ工夫が求められます。
ま た,常日頃から手洗いを徹底するとともに食品に直接触れる際には「使い捨ての手袋」を着用するなどの注意が必要です。
 調理施設等の責任者(営業者、食品衛生責任者等)は,外部からの汚染を防ぐために客用とは別に従事者専用のトイレを設置したり,調理従事者間の相互汚染を防止するためにまかない食の衛生的な調理,ドアのノブ等の手指の触れる場所等の洗浄・消毒等の対策を取ることが適当です。

平成17年1月11日 和歌山市保健所作成

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