中東呼吸器症候群(MERS(マーズ))
中東呼吸器症候群(MERS)は、2012年に初めて確認されたウイルス性の感染症です。
原因となるウイルスはMERSコロナウイルスと呼ばれています。 2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS(サーズ))の原因となった病原体もコロナウイルスの仲間ですが、SARSとMERSは異なる病気です。
主な症状は、発熱、せき、息切れなどです。下痢などの消化器症状を伴う場合もあります。MERSに感染しても、症状が現われない人や、軽症の人もいますが、特に高齢の方や糖尿病、慢性肺疾患、免疫不全などの基礎疾患のある人で重症化する傾向があります
主として中東地域*で患者が報告されています。
このほか、ヨーロッパ(イタリア、英国、オーストリア、オランダ、ギリシャ、ドイツ、フランス、トルコ)、アフリカ(アルジェリア、エジプト、チュニジア)、アジア(フィリピン、マレーシア、韓国、中国)及び北米大陸(アメリカ合衆国)からも患者の報告がありますが、これらはすべて、中東地域への渡航歴のある人もしくはその接触者であることがわかっています。
*アラブ首長国連邦、イエメン、イラン、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、ヨルダン、レバノン(2015年6月5日現在)
MERSの発生が報告されている地域においては、咳やくしゃみなどの症状がある人との接触を避け、また動物(ラクダを含む)との接触は可能な限り避けることが重要です。また、現在、MERSに対するワクチンや特異的な治療法はありません。患者の症状に応じた治療(対症療法)になります。
人がどのようにしてMERSに感染するかは、まだ正確には分かっていません。患者から分離されたMERSコロナウイルスと同じウイルスが、中東のヒトコブラクダから分離されていることなどから、ヒトコブラクダがMERSウイルスの感染源動物の一つであるとされています。その一方で、患者の中には動物との接触歴がない人も多く含まれています。家族間や、医療機関における患者間、患者−医療従事者間など、濃厚接触者間での感染も報告されています
海外の感染予防対策の実施が不十分な医療機関等においては、患者から医療従事者や他の患者に感染(二次感染)した例が報告されています。ただし、季節性インフルエンザのように、次々にヒトからヒトに感染すること(持続的なヒト−ヒト感染)はありません。
中東地域等、MERS患者の発生が報告されている地域への旅行は制限されていませんが、旅行する場合は以下のことに注意して下さい。
■旅行前
- 糖尿病や慢性肺疾患、免疫不全などの持病(基礎疾患)がある方は、MERSに限らず、一般的に感染症にかかりやすいので、旅行の前にかかりつけの医師に相談し、渡航の是非について検討してください。
- 渡航前に現地の最新の情報を検疫所ホームページ、外務省 海外安全ホームページ、在外日本国大使館ホームページなどで確認してください。
■旅行中
- 現地では、こまめに手を洗う、加熱が不十分な食品(未殺菌の乳や生肉など)や不衛生な状況で調理された料理をさけ、果物、野菜は食べる前によく洗う、といった一般的な衛生対策を心がけてください。
- 咳やくしゃみの症状がある人や、動物(ラクダを含む)との接触は可能な限り避けましょう。
- 咳、発熱などの症状がある場合は、他者との接触を最小限にするとともに、咳エチケット([1]マスクをする、[2]咳・くしゃみの際はティッシュペーパーなどで口と鼻を押さえ、他の人から顔をそむける、[3]使用したティッシュペーパーはごみ箱に捨て、手を洗うなど)を実行しましょう。日常生活に支障が出る程の症状がある場合は、医療機関を受診してください。
■旅行後
- 帰国時に発熱や咳などの症状がある方は、空港内等の検疫所へご相談ください。
- 帰国後14日以内に、発熱や咳などの症状がみられたら、直接医療機関には行かずに、事前に最寄りの保健所に連絡の上、中東地域等に滞在していたことを告げてください。
- 症状がある間は、他者との接触を最小限にするとともに、咳エチケットを実行してください。
厚生労働省(中東呼吸器症候群(MERS)に関するQ&A)より