2011年23Wの和歌山市5類感染症(定点把握)の発生状況です。
手足口病は、ヘルパンギーナ同様、7月の第1週をピークとする流行が特徴的です。年によっては、初冬まで発生が続くことや、逆に殆ど発生が見られないこともあります。和歌山市では、2009年は殆ど1年間報告がありませんでした。
2010年は、第17週に44件(定点当り4.89)、第20週に45件(定点当り5.00)と2つのピークを形成しました。
2011年は、第20週18件、一度減少し、第23週18件です。今後急増の可能性があります。
手足口病は、手掌、足底、臀部に出現する特有の皮膚所見(斑状丘疹→水疱)と口腔内の粘膜に出現する2〜5mm程度の水疱または発赤疹が特徴です。
ヘルパンギーナは手足口病と並んで毎年夏季を中心として主に乳幼児の間で流行するエンテロウイルス感染症の代表的疾患です。症状は、「突然の高熱での発症」と「口蓋垂付近の水疱疹や潰瘍や発赤」が特徴です。毎年第22〜23週(5月末〜6月初め)に流行レベルの基準値である定点当たり1.0人を超えた後に急増し、7月にピークを迎えます。患者の年齢は過去20年以上大きな変化はみられず、1〜4歳が約7割と大半を占めます。6歳以上は少なくなっています。
2009年は、例年より遅くに小さな流行がみられたのみでした。
2010年は、第21週13件から徐々に増加し、第27週65件(定点当り7.22)がピークでした。
「感染性胃腸炎」は小児に好発するロタウィルス腸炎やノロウィルス感染症にみられるように,冬季〜春先に大流行します。
今シーズン(2010-2011)は、例年より早く、第43週61件以降増加し、第44週は82件→第45週153件→第46週200件と急増、警報が発令され、第47週は更に238件に増加しました。年齢別では乳幼児と小学生での報告が中心ですが、おとなの報告もあります。集団生活の場での集団感染事例も発生しています。
ノロウィルス等には塩素系の消毒剤が有効です。嘔吐物や下痢便の処理は衛生的に取り扱い、汚れた場所や衣類等は熱湯や塩素系消毒剤で消毒しましょう。
2010年は、例年に比べて低めの発生状況でしたが、第9週以降増加傾向にあり、第13週に48件でピークを迎えました。その後は20〜30件前後で増減を繰り返しつつ減少傾向で、第33週からは10件前後で推移していましが、第48週以降増加傾向で、第1週には46件と急増しましたが、第2週以降はだいたい10件から20件前後を推移していますが、第18週は連休中にもかかわらず、33件に急増しました。その後徐々に落ち着き、第23週は18件と例年並みです。
水痘は、空気感染で、咽頭からウイルスが空中を放出され、口腔や鼻粘膜から侵入し感染します。また、水痘からの接触感染もあります。発疹が出る数日前からすでに感染性があるため、集団生活で感染拡大しやすい疾患です。ワクチンは、任意接種ですが、1歳以降での接種が勧められます。ただし、ワクチンを接種していても軽症ですが、発病することがあります。流行性耳下腺炎は約4年ごとに流行する傾向がみられています。
和歌山市では、2006年では第10週をピークに流行が続きましたが、2007年・2008年は大きな流行がなく少数報告にとどまりました。2009年は、第30〜32週ごろをピークに緩やかな流行を示しました。2010年は、おおむね10-20件前後でほぼ横ばいの傾向でした。
2011年第1週には31件と報告数の増加が見られました。第2週以降は20件から10件前後で推移しています。第23週7件でした。
本感染症は、髄膜炎、精巣炎、難聴、膵炎といった合併症があります。熱が続く場合、頭痛、吐き気がある場合、難聴、腹痛がある場合などは医療機関を早めに受診しましょう。抗ウイルス薬は開発されておらず、ワクチンの予防(任意接種)が効果的です。2〜5歳が好発年齢なので、1歳〜集団生活を始める前までの接種が勧められます。
伝染性紅斑は、小児を中心に見られる流行性発疹性疾患で、両頬がリンゴのように赤くなることから「リンゴ病」とも呼ばれます。病因はヒトパルボウイルスB19です。接触・飛沫感染します。感染後1週間くらいで微熱や感冒様症状を呈することがあります。潜伏期間は10〜20日くらいで、両頬の境界鮮明な紅い発疹が現れ、続いて手・足に網目状・レース状の紅斑が出現します。成人では頭痛や関節痛が見られます。発疹が出現した時にはウイルスの排出は終わっているので、出席停止等の対象にはなりません。
2010年の年末から報告数の増加が見られ、第3週18件(定点当り2.00)で警報発令されました。以後やや減少して、10件前後とやや多めの報告で推移していましたが、第19週17件から第20週20件と増加し、再び警報発令となっています。第21週は8件、第22週16件でした。2009年は2008年同様、第8週前後と第22週前後に2つのピークを形成し、その後は減少して第32週以降は0〜4件で推移しました。2010年は、ほぼ10件以下の報告で推移しました。
2011年も、5件未満で推移していましたが、第6週〜第9週まで10件前後と若干増加認められました。第7週、劇症型の報告が1件(90歳女性)ありました。その後は10件以下で推移しています。第22週は5件でした。
本感染症は、治療が十分に行われないと劇症化したり、急性糸球体腎炎やリウマチ熱など重篤な合併症を発症したりすることがあるので、早期診断、適切な治療(抗生剤投与)が必要です。劇症型感染の発症機序は明らかでなく、有効な予防対策や拡大防止策はありません。突然の発熱、咽頭痛、筋肉痛、発疹などがある場合、早期受診を心がけましょう。一般的には小児に多いですが、成人でも発症します。
[新型インフルエンザの流行状況]
2010-2011年シーズンは、第1週26件(定点当り1.73)から第2週55件(定点当り3.67)、第3週144件(定点当り9.60)に急増、第4週では243件(定点当り16.2)で注意報発令されました。これが第1のピークで、第7週には93件と注意報値を下回りました。ウイルスサーベイランスの結果より、A/H1(2009)の流行によるものです。その後さらに減少しましたが、第10週は71件に逆転増加し、第11週141件、第12週146件とさらに増加し2つ目のピークを形成しています。その後緩やかに減少していますが、第16週から再度増加に転じ、第17週107件と第3のピークを形成しました。B型及びA香港型でした。以後は減少傾向で、第22週1件、第23週2件とようやく収束です。
「新型インフルエンザ(A/H1N1pdm)」は、2011年4月1日より「インフルエンザ(H1N1)2009」と名称変更され、通常の季節性インフルエンザ対策に以降しました。
※1.次のグラフは、定点医療機関あたりの報告数を昨シーズンに比較してしますと同時に、和歌山市夜間・休日応急診療センターからの報告数を同時に示しています。第18週は連休のため、定点からの報告数は減少していますが、応急診療センターの報告数が増加しています。第19週・第20週は両者とも報告数が減少。第21週では応急診療センター報告数がゼロになりました。
※2.次の図は、応急診療センターの報告数をA型・B型別に示しています。
※3.次の図は、ウイルスサーベイランスの結果です。第8週以降徐々にA/H1(2009)の流行からからA/H3の流行に以降しているのがわかります。
【インフルエンザの感染予防及び受診上の注意】
インフルエンザの感染予防には、普段から手洗いの励行し、咳・くしゃみが出たら他の人にうつさないためにマスクを着用しましょう(「咳エチケット」)。また、発熱等により医療機関を受診する際には、必ず、医療機関への事前連絡とマスク着用を守りましょう。『電話で連絡・マスクで受診』
麻しん・風しんが、2008年1月1日より全数把握疾患となりました。
麻しんは2008年23件、2009年6件でした。
風しんは2008年2件、2009年1件でした。
2010年は、麻しんの報告1件あり。風しんの報告はありませんでした。
2011年第23週現在、麻しん、風しんともに報告はありません。
<和歌山市の状況>
風疹は,和歌山市内では,定点報告で、2004年7件,2005年4件でした。以降、和歌山県の全数報告事業でも報告は0でした。
2008年は、第3週(16歳)、第22週(70歳代)の計2件の報告でした。
2009年は、第17週で初めての報告。11歳です。単抗原ワクチン接種済みでした。
2010年は報告がなく、2011年も第23週現在まで発症報告はありません。
<和歌山市の状況>
2007年は、第19〜23週に計10件の報告がありました。
2008年は、第10〜46週に計23件、2009年は、第16〜24週に計6件でした。
2010年は、第22週に1件報告がありました。
2008年、2009年、2010年の年齢別の届出状況は次のとおりです。
2011年第23週現在、麻しんの報告はありません。関東地方で報告数が増加しています。ゴールデンウィーク等で人の移動が大きくなりますので、全国に感染拡大する可能性が危惧されます。早期に患者を診断することとワクチン接種が重要です。
年齢区分 | |||||||||||
0歳 | 1歳 | 5歳 | 10歳 | 15歳 | 20歳 | 25歳 | 30歳 | 35歳 | 40歳 | 計 | |
2008年 3/3〜11/10 | 0 | 6 | 2 | 7 | 6 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 23 |
2009年 | 0 | 6 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 6 |
2010年 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
<麻しんの特徴>
麻しんに対して免疫を持たない者が感染した場合、10日前後の潜伏期を経て発症し、発熱・咳・鼻水・眼脂・結膜充血等のカタル期(2〜4日)、発疹期(3〜5日)、回復期へと続いていくウイルス感染症です。感染期間としては、カタル期から発疹後4〜5日までウイルスの排出の可能性があります。
<麻しんのウイルス診断>
2015年の麻しん征圧を目指して、様々な取り組みが実施されていますが、診断精度をより高めるために、麻しん(疑い)と診断された場合、ウイルスPCR検査を全例に実施しています。咽頭ぬぐい液及び血液の採取にご協力ください。
<市民のみなさま・特に子育て中の保護者のみなさまへのメッセージ>
麻しんの予防には、予防接種の徹底が何より重要です。【Stop 麻しん・風しん】を参照。お子様が満1歳になりましたら先ず麻しんワクチン(=麻しん・風しん混合ワクチン)を接種しましょう。また、就学前の1年間の2回目の接種も忘れずうけましょう。
平成20年度から5年間、中学1年生及び高校3年生相当の方も麻しん風しん混合ワクチンの接種対象となりました。対象者の方が接種できる期間は、それぞれ1年間のみです。早めに接種しましょう。
<若年成人の方へのメッセージ>
ワクチン接種率が向上し,罹患者は減ったものの,接種漏れなどで免疫のない人がかかると重症化する恐れがあります。現在の20歳代及び10歳代後半の若年者は、ワクチンの接種率が低く、また、接種者でも接種から10年以上が経過し抗体価が低下している場合もあるため、感染者が多くでています。接種歴のない方や抗体価が低い場合は、ワクチン接種が必要です。
機会を見て、ワクチン接種(任意接種)をうけましょう。
麻しん・風しんの予防接種は,平成18年4月1日より,次のとおりです。
第1期 満1歳〜満2歳になるまでの間に1回
第2期 満5歳〜7歳未満で,小学校入学日の1年前の日から小学校入学前日までの間に1回
いずれも,「麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)」を接種しますが,いずれか一方の既往歴がある場合等には,「麻しん単抗原ワクチン」もしくは「風しん単抗原ワクチン」を接種します。1回接種では、将来抗体価の低下が危惧されます。目標は95%以上。第2期を忘れず接種しましょう。平成21年度の接種率は第1期:94.4%・第2期:94.3%と、目標を下回っています。
「麻しん排除計画」の一環として、平成20年4月1日から平成25年3月31日までの5年間、麻しん・風しんの予防接種 第3期・第4期が実施されています。
第3期 中学1年生で 「麻しん風しん混合ワクチン」を1回接種
第4期 高校3年生相当で 「麻しん風しん混合ワクチン」を1回接種
いずれも95%以上の接種率を目標とし、麻しん・風しんの排除を目指しています。
このことにより 平成2年4月2日以降に出生したものは、高校卒業までに麻しん・風しんワクチンの2回接種が完了することになります。
ワクチン未接種で罹患したこともない女性が妊娠初期に風疹に罹患したときにウイルスが胎児に感染し,出生児に「先天性風疹症候群」を起こすことがあります。この先天性風疹症候群は「感音性難聴」,「白内障または緑内障」,「心疾患」が3主徴で,通常妊娠第16週までに起ることが殆どです。
感染症法では,「先天性風しん症候群」は全数把握となっていますが,今まで1年に全国で1件以内だったのが,2004年では,9件の報告がありました。
和歌山市内では1999年以降,「先天性風疹症候群」の報告はありません。
また,「風疹」は,和歌山市内では,2004年7件,2005年4件の報告でした。2008年第3週で5年ぶりに1件の報告があり年間で2件でした。
非流行時から妊娠可能年齢の女性の積極的な予防接種が重要です。また,流行阻止のために,ワクチン接種歴がなく,罹患もしていない人は,男女とも予防接種(任意接種)を受けることが望まれます。