和歌山市感染症情報センター

今、注目の感染症
 

【5類感染症:定点把握】 第32週(8月4日〜8月10日)

2008年第32週の和歌山市の5類感染症(定点把握)の発生状況です。
◎ 感染性胃腸炎は、通常年間で最も少ない時期です。 ここ数週は、50件程度と比較的低い水準で推移していました。 第30週は76件に増加、第31週には61件、第32週は57件に減少です。この時期としてはやや多め状況です。
◎ 咽頭結膜熱は、大きなピークがないまま経過しています。 第29週に12件に増加し、第30週は6件、第31週9件、第32週5件と報告が続いています。今後の動向に注意しましょう。
◎ ヘルパンギーナは、第28週28件、第29週25件が今シーズンの小さなピークで、以後、第30週は8件、第31週15件、第32週13件でした。県内では、新宮管内及び湯浅管内で報告が多く警報が発令されています。
◎ RSウィルス感染症は、第30・31週は3件、第32週4件と夏場になってからも報告が続いています。
◎ A群溶血性レンサ球菌感染症は、年間で最も少ない時期を迎えています。第31週は2件のみ、第32週は6件でした。
◎ 水痘は、第25週40件に増加したものの、以降は、減少し、第31週8件、第32週10件と年間で最も少ない時期となっています。
◎ 百日咳は第23週、27週、30週と1件ずつ報告されています。
◎ 流行性耳下腺炎は、10件前後で増減しています。第30週12件から第31週は4件、第32週5件に減少です。
◎ 他の感染症は、全体に報告が少ない状況となっています。
◎ 眼科定点では、流行性角結膜炎が第30週に8件報告あり。過去5年間で最高です!第31週も7件と報告が続きましたが、第32週は4件にやや減少しました。
また、急性出血性結膜炎も1件(7歳)の報告でした。
◎ 基幹病院定点では、マイコプラズマ肺炎が1件(1-4歳1件)報告がありました。



「感染性胃腸炎」は小児に好発するロタウィルス腸炎やノロウィルス感染症にみられるように,冬季〜春先に大流行します。例年40週後半を過ぎた当たりから急激に増加を始め年末にピークを迎えます。
2008年は、前年と類似の推移を示しており、第10週188件、第11週191件をピークに流行し、第13週以降は100件前後の報告が続いていました。 第25週ごろから減少し50件程度で横ばい状況です。1年間で最も少ない時期ですが、第30週は76件、第31週61件、第32週57件とこの時期としてはやや多めの報告となっています。
年齢別では、乳幼児からおとなまで幅広い年齢層で報告されています。
日常生活における予防としては、「手洗い」「うがい」励行などを日ごろより心がけて下さい。また嘔吐・下痢などの症状があるときには、十分に水分補給をして下さい。
ノロウィルスには塩素系の消毒剤が有効です。嘔吐物や下痢便の処理は衛生的に取り扱い、汚れた場所や衣類等は熱湯や塩素系消毒剤で消毒しましょう。乳幼児や高齢者等集団生活の場では、感染拡大の防止を心がけましょう。




夏風邪の代表ですが、2008年は、第17週で12件の報告がありました。例年と比較して早めの立ち上がりと思われましたが、以降は5件前後で横ばい状況が続きました。 第29週に12件と増加しましたが、第30週には6件、第31週は9件、第32週5件と、大きな流行にはつながらず、報告は減少傾向です。



ヘルパンギーナは手足口病と並んで毎年夏季を中心として主に乳幼児の間で流行するエンテロウイルス感染症の代表的疾患です。症状は、「突然の高熱での発症」と「口蓋垂付近の水疱疹や潰瘍や発赤」が特徴です。毎年第22〜23週(5月末〜6月初め)に流行レベルの基準値である定点当たり1.0人を超えた後に急増し、ピークは7月です。患者の年齢は過去20年以上大きな変化はみられず、1〜4歳が約7割と大半を占めます。6歳以上は少なくなっています。
IDWR30週より、全国では第29週をピークに第30週は減少しています。例年よりややゆっくりめの流行曲線ですが、ピーク値は、定点あたり4.41で平均的な報告数です。
和歌山では、2008年は、例年と比較して報告が少なめです。 第28週:28件(定点あたり3.11)、第29週:25件と小さめのピークが見られたものの、第30週には8件に減少し、第31週は15件、第32週13件と大きな流行となりませんでした。



流行性耳下腺炎は約4年ごとに増える傾向がみられています。
和歌山市では,2006年では第10週をピークに流行が続きましたが、第19週以降漸減しています。2007年では第15週までの期間1〜11件を推移していましたが、その後は5件以下と非常に少ない状況が続きました。
2008年も同様に少ない状況が続いていましたが、第27週は11件(定点当たり1.22)と増加し、第28週は3件と減少しものの、第29週は8件、第30週12件と増加傾向です。しばらく流行がなかっただけに、今後の動向が注目されていましたが、第31週には4件に減少し、第32週も5件と今のところ落ち着いています。
年齢別では、乳幼児に4件と20-29歳で1件でした。



2008年に入り、第5週に27件(定点当り3.00)に急増、以降20件前後で推移していましたが、第11週以降、10件前後の報告で全体として減少傾向です。 第31週には2件に減少し、第32週は6件でした。年間で最も少ない状況です。
本感染症では,治療が十分に行われないと腎炎,リウマチ熱を発症することがあるので,早期診断,適切な治療が特に必要とされています。田辺保健所管内には警報が発令されており今後の動向に注意が必要です。



第13週に15件から36件へ増加し、注意報が発令されました。以降、増減しつつほぼ例年並の状況でした。第25週40件(定点当たり4.44)と増加しましたが、第27週以降減少傾向を示しています。第31週は8件、第32週10件でした。年間で最も少ない時期を迎えつつあります。
年齢別では、就学前の乳幼児が中心です。




2008年は、全国的には流行し、第19〜22週に最も報告が多く、過去最高でした。以降減少し、IDWR第30週ではピークの1/4の定点あたり0.04まで減少しましたが、過去5年間の同時期と比較するとまだかなり多い状況です。 また、IDWR第24週では、年齢別で0歳児12.7%ですが、20歳以上が37.5%を占めており、10-14歳も15.9%と年長者での報告が多いのが今年の特徴です。
和歌山県は報告が少ない状況です。
和歌山市では、第17週に初めて1件(15-19歳)の報告がありました。第18〜21週は報告なし、第22週再び1件(20-29歳)、第23週には2件(9歳、10-14歳)の報告がありました。第24〜26週は報告なし、第27週1件、2週間報告なく、第30週1件でした。第31・32週は報告なしです。



RSウイルス感染症の流行は毎年冬で、特に乳幼児(特に6ヶ月未満)に中心にみられる肺炎、気管支炎などの急性下気道感染症です。ロタウイルス腸炎と並んで、冬季に流行する乳幼児に多い感染症です。
2007年では、第50週では20件に急増、以後、第51週:15件、第52週:24件と増加傾向で流行のピークを迎えました。
2008年に入り、10件以下の報告が続いています。第10週以降は1〜2件、第16週は0件と流行は一旦終息しました。
しかし、第17週は再び4件、第18週8件の報告があり、その後増減を繰り返しています。第30・31週とも3件。第32週は4件でした。年齢別では、0-5か月:2件、6-11か月:1件、5歳:1件でした。今後の動向に注意が必要です。




流行性角結膜炎は、過去5年間 多くて5件以内の報告でしたが、第30週では8件と急増しました。第31週も7件と多い状況がつづいています。年齢別では、2歳1件、4歳3件、7歳1件、30−39歳1件、50−59歳1件と、幅広い年齢層で報告されています。今後の動向に注意しましょう。





【麻しん・風しん】 (第5類感染症全数把握) 第10〜32週

麻しん・風しんが、2008年1月1日より全数把握疾患となりました。
麻しんは、第10週に2件報告があり、以後第17週まで報告が続きました。第18〜22週は0件でしたが、第23週、第30週に1件ずつ。
風しんは、第3週に1件、第22週に1件の報告ありです。



「風疹」は,和歌山市内では,2004年7件,2005年4件の報告(定点報告)で、以降、和歌山県の全数報告事業でも報告は0でした。
第3週に1件報告(16歳)があり、5年ぶりの報告でした。
また、第22週に1件(70歳以上)報告があり、計2件となりました。



<和歌山市の状況>
2007年 和歌山市において第19〜23週にかけて、計10件報告がありました。成人の3件はいずれもワクチン接種歴不明、小児は6件がワクチン接種なし、1件がワクチン接種済みでした。
2008年の届出状況は次のとおりです。
第10週:2件(中学生2件)、第11週に1件(小学生)、
第12週:6件(1歳児1件・中学生4件・30歳代1件)
第13週:3件(中学生2件・大学生1件)
第14週:3件(1歳児1件・小学生2件)
第15週:0件  
第16週:1件(小学生1件)
第17週:3件(1歳2件・40歳代1件)
第18〜22週:0件   
第23週:1件(2歳1件)
第24〜29週:0件
第30週:1件(5歳1件)     で、計21件です。
中学生の8件のうち7件は同じ中学校の生徒です。このうち1件は平成12年に予防接種をしていました。また、中学生1件、1歳児1件は、患者との接触後に緊急接種をしましたが、間に合わず発症しました。他はいずれも接種歴なしです。30歳代の1件は接種歴不明でした。第17週の1歳児2件のうち1件は接種歴なし、1件は接種後1年以内だが発病。40歳代の1件は罹患歴ありとのこと。第30週の1件は接種歴あり、修飾麻しんの診断です。



2008年の年齢別、週別の届出状況は次のとおりです。 (平成20年6月1日現在)

  年齢区分
0歳 1-4 5-9 10-14 15-19 20-24 25-29 30-34
10週 3/3-       1 1       2
11週 3/10-       1         1
12週 3/17-   1   2 2     1 6
13週 3/24-         3       3
14週 3/31-   1 1 1         3
15週 4/7-                 0
16週 4/14-       1         1
17週 4/21-   2           1 3
18〜22週 4/28-                 0
23週 6/2-   1             1
24週〜 6/9-                 0
30週 7/21-     1           1
0 5 2 5 6 0 0 1 21

「麻しん」と臨床診断されるまで、内科や皮膚科等複数の医療機関を受診している事例もあり、診断精度の向上が求められます。

<麻しんの特徴等>
麻しんに対して免疫を持たない者が感染した場合、10日前後の潜伏期を経て発症し、発熱・咳・鼻水・眼脂・結膜充血等のカタル期(2〜4日)、発疹期(3〜5日)、回復期へと続いていきます。感染期間としては、カタル期から発疹後4〜5日までウィルスの排出の可能性があります。
なお、患者との接触から3日以内であれば、麻しんワクチンの接種により感染を予防できる可能性があります。早期診断と接触者への迅速な対応が重要です。

<市民のみなさま・特に子育て中の保護者のみなさまへのメッセージ>
麻しんの予防には、予防接種の徹底が何より重要です。【Stop 麻しん・風しん】を参照。お子様が満1歳になりましたら先ず麻しんワクチン(=麻しん・風しん混合ワクチン)を接種しましょう。また、就学前の1年間の2回目の接種も忘れずうけましょう。
平成20年度から5年間、中学1年生及び高校3年生相当の方も麻しん風しん混合ワクチンの接種対象となります。対象者の方が接種できる期間は、それぞれ1年間のみです。早めに接種しましょう。

<若年成人の方へのメッセージ>
ワクチン接種率が向上し,罹患者は減ったものの,接種漏れなどで免疫のない人がかかると重症化する恐れがあります。現在の20歳代及び10歳代後半の若年者は、ワクチンの接種率が低く、また、接種者でも接種から10年以上が経過しているため、抗体価が低下して場合もあるため、感染者が多くでています。接種歴のない方や抗体価が低い場合は、ワクチン接種が必要です。
機会を見て、ワクチン接種(任意接種)をうけましょう。
また、発熱等の症状があった場合には、医療機関を受診し、診断をうけましょう。発熱等があるときに無理して職場や学校等へ行くことは、感染性の疾患であった場合、感染拡大につながりますので控えてください。



Stop 麻しん・風しん = 「予防接種」は最も有効で積極的な予防法!!

麻しんや風しんの予防接種は,平成18年4月1日より,次のとおりです。
  第1期 満1歳〜満2歳になるまでの間に1回
  第2期 満5歳〜7歳未満で,小学校入学日の1年前の日から小学校入学前日までの間に1回

いずれも,「麻しん風しん混合ワクチン」を接種しますが,いずれか一方の既往歴がある場合等には,「麻しん単抗原ワクチン」もしくは「風しん単抗原ワクチン」を接種します。平成18年度の第2期の接種率は70%程度です。1回接種では、将来抗体価の低下が危惧されます。目標は95%以上。第2期を忘れず接種しましょう。 「麻しん排除計画」の一環として、平成20年4月1日から平成25年3月31日までの5年間、麻しん・風しんの予防接種 第3期・第4期が実施されます。
  第3期 中学1年生で 「麻しん風しん混合ワクチン」を1回接種
  第4期  高校3年生相当で 「麻しん風しん混合ワクチン」を1回接種

いずれも95%以上の接種率を目標とし、麻しん・風しんの排除を目指しています。
このことにより 平成2年4月2日以降に出生したものは、麻しん・風しんワクチンの2回接種が完了することになります。

風しんと先天性風しん症候群の予防について

 ワクチン未接種で罹患したこともない女性が妊娠初期に風疹に罹患したときにウィルスが胎児に感染し,出生児に「先天性風疹症候群」を起こすことがあります。この先天性風疹症候群は「感音性難聴」,「白内障または緑内障」,「心疾患」が3主徴で,通常妊娠第16週までに起ることが殆どです。
感染症法では,「先天性風しん症候群」は全数把握となっていますが,いままで1年に全国で1件以内だったのが,2004年では,9件の報告がありました。
和歌山市内では1999年以降,「先天性風疹症候群」の報告はありません。
また,「風疹」は,和歌山市内では,2004年7件,2005年4件の報告でした。2008年第3週で5年ぶりに1件の報告がありました。
非流行時から妊娠可能年齢の女性の積極的な予防接種が重要です。また,流行阻止のために,ワクチン接種歴がなく,罹患もしていない人は,男女とも予防接種(任意接種)を受けることが望まれます。
なお,妊娠可能な女性については,ワクチン接種後2か月間の避妊が必要です。


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