第51週の和歌山市の5類感染症(定点把握)の発生状況です。
◎ インフルエンザは、第43週に今シーズン初報告があり、その後増加傾向が続いています。第48週:163件、第49週:266件、第50週:334件、第51週:382件と患者数は増加傾向です。和歌山市保健所管内では注意報が発令されています。例年と比較すると、発令時期は早く、流行のピークも例年よりかなり早くなる事が予想されます。毎年インフルエンザでの死亡例も報告されており、ワクチン接種が最も効果的とされています。ワクチン未接種の方は早急にワクチン接種をご検討ください。
◎ 感染性胃腸炎も、昨シーズンのような急増は無いものの、今シーズンも多く報告されています。例年では年末にピークを認め、年明け後も流行が続く感染力の強い感染症です。そのため、今後さらに増加する可能性は十分考えられます。本症は脱水が進み子どもやお年寄りの命をうばうこともあります。手洗いうがいで大部分が予防できますので、帰宅時や食事前などにはぜひうがい手洗いを励行しましょう。
◎ A群溶血性レンサ球菌感染症は、今シーズンは第46週は24件と増加の兆しがあり、以降増減しています。第51週は12件でした。例年11月後半から12月に急激に増加する傾向があります。今年は過去5年の同時期と比較して多くなっています。
◎ RSウイルス感染症は、第48〜49週が各6件と例年のような増加傾向はありませんでしたが、第50週では20件と増加、第51週は15件でした。例年の傾向を考えますと、この時期に患者数がさらに増加する可能性が高いですので、引き続き注意が必要です。
◎ 水痘は、第45週以降増加傾向を認めています。第51週は35件に増加しています。例年11月後半〜翌年1月にかけて増加の傾向があるため、引き続き注意が必要です。
◎ 他の感染症は、全体に報告が少ない状況となっていますが、数週間患者を認めなかったヘルパンギーナと手足口病は、第50・51週とも2件ずつの報告がありました。
◎ 眼科定点では流行性角結膜炎が4例報告されました。
◎ 基幹病院定点では第45週以降報告はありません。
インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原微生物とする急性の呼吸器感染症です。例年冬季を中心に全国的な流行が発生し年間1000万人以上の発病者が国内で報告されています。臨床経過は典型的な場合は、感染してから1〜3日間の潜伏期を経た後に突然の発熱(通常では38℃以上)、頭痛、倦怠感、筋肉痛、関節痛などの症状で発症し、次いで咳、鼻汁などの上気道炎症状が続きます。「突然の発熱→上気道症状の出現」「筋肉痛、関節痛」が「かぜ」症状と違う点です。合併症がなければ約1週間の経過で軽快しますが、高齢者や基礎疾患を持っている場合は現疾患の悪化と共に二次的な細菌性肺炎を起こす場合があります。また小児では中耳炎の合併や熱性痙攣、気管支喘息の誘発を招くことがあります。更にまれではありますが乳幼児を中心に急性脳症を合併する場合があることも明らかになってきています。以上よりインフルエンザはいわゆる「かぜ」よりも特別な警戒が必要です。最も効果的な対策はインフルエンザワクチン接種による予防です。特に今年は上記した如く、例年に比して流行のピークが早まる事が予想されますので、早めのワクチン接種をお願いします。また、うがい、手洗いの励行もお願いします。
第50週では、和歌山市、海南、御坊保健所管内において注意報が、岩出保健所管内では警報が発令されています。第51週では、新たに田辺、新宮保健所管内にも注意報が発令されました。
「感染性胃腸炎」は小児に好発するロタウィルス腸炎やノロウィルス感染症にみられるように,冬季〜春先に大流行します。例年40週後半を過ぎた当たりから急激に増加を始め年末にピークを迎えます。
2006年は、全国的に例年より立ち上がりが早く、第46週時点で1定点あたり19.80と1981年の調査開始以来最高を記録しました。和歌山市でも、2006年は、第49週に373例(定点当り41.44)と過去最高の報告数となり,第46週から52週まで警報発令が続きました。
2007年では、第1週から第8週まで報告数が少なく、過去8年間の中でも最も少ない状況が続いていましたが、第9週161件,第10週179件,第11週187件(定点当り20.78)と増加が続き、警報が発令されました。第15週以降もしばらく100件を越える報告が続きました。第29週はほとんど50件以下の報告数で第40週では34件と今年に入って最も少ない数でした。
今シーズンは、第41週(42件)から第45週(162件)にかけて増加傾向でしたが、第46週(129件)以降は、第47週(106件)、第48週(132件)、第49週(116件)、第50週(138件)と、高い頻度を維持しています。例年の傾向を考慮すると、今後さらに増加する可能性は十分考えられ、より一層の注意が必要です。年齢別では、乳幼児を中心ですが、20歳代まで幅広く報告がみられます。
日常生活における予防としては、「手洗い」「うがい」励行などを日ごろより心がけて下さい。また嘔吐・下痢などの症状があるときには、十分に水分補給をして下さい。ノロウィルスには塩素系の消毒剤が有効です。嘔吐物や下痢便の処理は衛生的に取り扱い、汚れた場所や衣類等は熱湯や塩素系消毒剤で消毒しましょう。乳幼児や高齢者等集団生活の場では、感染拡大の防止に心がけましょう。
2007年は、第7週46件(定点当り5.11)に急増し、警報が発令されました。過去最高の報告数でした。以後,急速に減少し,以降は例年並の推移です。
例年11月後半から12月前半に増加しますが、例年と比較しやや多めの状況で、第46週では24件と急激に増加しました。以降、増減しつつ、第51週では12件と減少しています。本感染症では,治療が十分に行われないと腎炎,リウマチ熱を発症することがあるので,早期診断,適切な治療が特に必要とされています。
RSウイルス感染症の流行は毎年冬で、特に乳幼児(特に6ヶ月未満)に中心にみられる肺炎、気管支炎などの急性下気道感染症です。ロタウイルス腸炎と並んで、冬季に流行する乳幼児に多い感染症です。2006年では第45週以降報告が続き、第51週44件でピークとなりました。
今年は第47〜49週で各6件と過去2年に認められた増加傾向は今のところ認められていませんでしたが、第50週では20件と増加傾向に転じました。例年の傾向を考慮すると今後患者数がさらに増加する可能性が高いため注意が必要です。
2007年第1週では74件(定点当り8.22)に急増し、警報が発令されました。以降,増減しつつ,漸減傾向でした。第14週には41件(定点当り4.56)と再増加し,再度注意報発令されましたが、第15週は18件(定点当り2.0)に減少し注意報は解除されました。以降、例年並でありましたが、第21週は34件(定点当り3.78)と増加しましたが、その後は減少傾向でした。第44週16件、第45週19件、第46週13件、第47週は23件と例年どおりに増加傾向が認められました。第48週ではいったん減少に転じたものの、第49週では29件と再び上昇、第51週ではさらに35件に増加です。例年12月中から1月初旬に流行のピークがあるため、引き続き十分ご注意ください。
2007年度に入ってから第36週までは和歌山県内で報告はありませんでしたが、第37週に御坊市、田辺市でそれぞれ1件ずつ報告がありました。以降、県内での報告はありません。
流行性耳下腺炎は約4年ごとに増える傾向がみられています。
和歌山市では,2006年では第10週をピークに流行が続きましたが、第19週以降漸減しています。2007年では第15週までの期間1〜11件を推移していましたが、その後は5件以下と例年以下の状況が続いていましたが、第45週は7件の報告がありました。その後は第46週に1件、第47〜50週では報告なし、第51週2件でした。
和歌山市内では第46週の2件を最後に第47週〜49週まで報告はありませんでしたが、第50週は2件(1歳、2歳)、第51週2件(1歳、2歳)の報告がありました。
和歌山市内では第45週の4件を最後に、第46週〜49週まで報告がありませんでしたが、第50週には2件(1歳2件)、第51週2件(1歳2件)の報告がありました。
<和歌山市の状況>
和歌山市において第19〜23週にかけて小児科定点より麻しん5件、基幹定点より成人麻しん1件、定点外より4件、合計10件報告されました。第25週以降、報告はありません。なお、成人麻しんの3件はいずれもワクチン接種歴不明、小児は6件がワクチン接種なし、1件がワクチン接種済みでした。
麻しんの小児科定点からの報告は、2003年には年間累計105件と比較的多数が報告されましたが、2004年・2005年は1件のみでした。また、基幹定点報告も、2003年は年間累計12件でしたが、2004年以降は報告がありませんでした。また、2005年5月2日以降の全数把握事業においても市内の報告はなく、今年は、4年ぶりの麻しん患者の複数報告となりました。
<和歌山県の状況> 和歌山市を除く県内の麻しんの報告状況です。
第18週以降の累計は13件です。第22週以降の報告はありませんでした。
<麻しんの特徴等>
麻しんに対して免疫を持たない者が感染した場合、10日前後の潜伏期を経て発症し、発熱・咳・鼻水・眼脂・結膜充血等のカタル期(2〜4日)、発疹期(3〜5日)、回復期へと続いていきます。感染期間としては、カタル期から発疹後4〜5日までウィルスの排出の可能性があります。
なお、患者との接触から3日以内であれば、麻しんワクチンの接種により感染を予防できる可能性があります。早期診断と接触者への迅速な対応が重要です。
<市民のみなさま・特に子育て中の保護者のみなさまへのメッセージ>
上記のとおり、現状では、和歌山県内・市内とも各地で散発事例が認められているものの、際立った流行は認められておりません。
麻しんの予防には、予防接種の徹底が何より重要です。【Stop 麻しん・風しん】を参照
お子様が満1歳になりましたら先ず麻しんワクチン(=麻しん・風しん混合ワクチン)を接種しましょう。また、就学前の1年間の2回目の接種も忘れずうけましょう。
<若年成人の方へのメッセージ>
ワクチン接種率が向上し,罹患者は減ったものの,接種漏れなどで免疫のない人がかかると重症化する恐れがあります。現在の20歳代及び10歳代後半の若年者は、ワクチンの接種率が低く、また、接種者でも接種から10年以上が経過しているため、抗体価が低下して場合もあるため、感染者が多くでています。接種歴のない方や抗体価が低い場合は、ワクチン接種が必要です。
機会を見て、ワクチン接種(任意接種)をうけましょう。
また、発熱等の症状があった場合には、医療機関を受診し、診断をうけましょう。発熱等があるときに無理して職場や学校等へ行くことは、感染性の疾患であった場合、感染拡大につながりますので控えてください。
<全国の状況>
IDWR第17〜21週では、全国の小児科定点約3,000か所からの麻しんの報告数は約200件と大幅に増加し、2004年以降の最高値となっていました。
2007年第1週〜21週の累積報告数は1121件で2004年以来3年ぶりに1000件を上回りました。関東地域が中心ですが、全国的な拡がりを見せていました。その後報告数は減少傾向で、IDWR37週では、36件でした。
小児科定点からの全国の「風しん」患者数は,2004年に一部の地域(群馬県,大分県,鹿児島県,宮城県,埼玉県など)で多く報告されました。全国3000の小児科定点医療機関から第20週243例,定点当り0.08人の報告で感染症法施行以降最高値となりました。
患者の年齢別では,2004年では以前と比較して10〜14歳及び20歳以上の割合が明らかに大きくなっています。これらは小児科定点からの報告であるため,実際の成人の風疹罹患数はより多い可能性があります。
一方,ワクチン未接種で罹患したこともない女性が妊娠初期に風疹に罹患したときにウィルスが胎児に感染し,出生児に「先天性風疹症候群」を起こすことがあります。この先天性風疹症候群は「感音性難聴」,「白内障または緑内障」,「心疾患」が3主徴で,通常妊娠第16週までに起ることが殆どです。
感染症法では,「先天性風しん症候群」は全数把握となっていますが,いままで1年に全国で1例以内だったのが,2004年では,9例の報告がありました。
和歌山市内では1999年以降,「先天性風疹症候群」の報告はありません。
また,「風疹」は,和歌山市内では,2004年7例,2005年4例の報告でした。
非流行時から妊娠可能年齢の女性の積極的な予防接種が重要です。また,流行阻止のために,男女とも,ワクチン接種歴がなく,罹患もしていない人は,男女とも予防接種(任意接種)を受けることが望まれます。