腸管出血性大腸菌(O157)感染症が、和歌山市において第28週に1例、第29週に2例報告されました。幼児2名と80歳代1名でした。第1週からの累計は7例になりました。年間を通じて発生する感染症ですが、特に夏季は発生が増加します。小さいお子さんや高齢者は、感染した場合発病しやすいので注意が必要です。
第30週の和歌山市の5類感染症(定点把握)の発生状況です。
手足口病は、第23週5例から第24週42例と大幅な増加がみられ、第26週は50例と増加傾向を認めたため、警報を発令しました。その後、第29週の217例をピークに第30週は198例と減少に転じましたが、今後の感染には依然十分な注意が必要です!
ヘルパンギーナは,これまでほとんど発生が報告されていませんでしたが、第29週は13例、第30週は16例の報告があり、上昇傾向です。例年,今頃の時期から患者数が増加するため、今後の感染に十分な注意が必要です。
関東地域中心に流行がみられていました麻しんですが、和歌山市において第19〜24週にかけて小児科定点より麻しん5例、基幹定点より成人麻しん1例、定点外より4例の合計10例報告されました。第25週以降新たな報告はありませんが、今後も感染に十分な注意が必要です。
感染性胃腸炎は例年より報告数が多い状況が続いてきましたが、ようやく例年並みになってきました。
他の感染症は全体に報告が少ない状況となっています。
眼科定点は流行性角結膜炎2例(成人)の報告でした。
第22週までほとんど報告がなかった手足口病が第23週5例の報告、第24週になり42例(定点当たり4.67)と大幅に増加がみられました。第25週は31例とやや減少しましたが、第26週は50例(定点当たり5.56)と再び増加したため、警報を発令しました。第27週にはさらに倍増し107例となり、第28週には195例、第29週には217例と大きく増加しました。第30週は198例と減少に転じましたが、依然多数の発生を認めています。例年よりも流行しており、今後もさらなる注意が必要です。
ヘルパンギーナは,流行の始まる季節となりました。例年,今頃の時期から患者数が増加し,20週後半から30週にピークを迎えています。これまでほとんど発生が報告されていませんでしたが、第29週は13例、第30週は16例の報告がありました。これから更に増加していく可能性がありますので注意が必要です。年齢別では,幼児に集中しています。
2006年は,国内の咽頭結膜熱の報告数については、国立感染症研究所が発刊するIDWR(2006年第42週)によると「定点当たり報告数は微増し、過去5年の同時期と比較してかなり多い状態が続いている」と報告されていました。
和歌山市でも、第23週23例(定点当り2.56)をピークに、以降10例前後で推移、第32週以降は減少しましたが、年間通じて数例の報告がみられました。
2007年では,第1週から18週まで1例から5例で推移していましたが、第19週は7例とやや増加したものの、その後は2〜4例の報告で、第24週以降ゼロでしたが第26週は1例、第27週は3例、第28週には3例の報告がありました。第29週はゼロでしたが、第30週は1例報告されています。今後流行の時期になるので十分に注意しましょう。
和歌山県・市では,感染症発生動向調査と並行し,2005年5月より,麻しんと風しんの全数把握事業を実施しています。和歌山市内では、2005年6月以降2007年第18週まで、麻しん・風しんとも報告はありませんでした。
<和歌山市の状況>
和歌山市において第19〜23週にかけて小児科定点より麻しん5例、基幹定点より成人麻しん1例、定点外より4例、合計10例報告されましたが、第25週以降、報告はありません。
下記の流行曲線をみても分かるように、2003年流行時はこれからの時期にピークがありますので、今後も充分な注意が必要です。なお、成人麻しんの3例はいずれもワクチン接種歴不明、小児は6例がワクチン接種なし、1例がワクチン接種済みでした。
麻しんの小児科定点からの報告は、2003年には年間累計105例と比較的多数が報告されましたが、2004年・2005年は1例のみでした。また、基幹定点報告も、2003年は年間累計12例でしたが、2004年以降は報告がありませんでした。また、2005年5月2日以降の全数把握事業においても市内の報告はなく、今年は、4年ぶりの麻しん患者の複数報告となりました。
<和歌山県の状況> 和歌山市を除く県内の麻しんの報告状況です。
第18週以降の累計は13例です。第22週以降の報告はありませんでした。
和歌山市 | 和歌山県(和歌山市分含む) | ||||
麻疹 | 風疹 | 麻疹 | 風疹 | ||
2005年5月2日〜 | 0 | 4 | 2 | 9 | |
2006年1月2日〜 | 0 | 0 | 1 | 2 | |
2年間の累計 | 0例 | 4例 | 3例 | 11例 | |
2007年 1月1日 〜 4月29日 |
1〜17週 | 0 | 0 | 0 | 0 |
4月30日 〜 5月6日 |
18週 | 0 | 0 | 1(1歳) | 0 |
5月7日 〜 5月13日 |
19週 | 3(0歳・10-14歳 |
0 | 0 | 0 |
5月14日 〜 5月20日 |
20週 | 2(25-29歳:2) | 0 | 3(10-14歳:1・ 15-19歳:2) |
0 |
5月21日 〜 5月27日 |
21週 | 1(1歳) | 0 | 9(1歳:1・ |
0 |
5月28日 〜 6月3日 |
22週 | 2(10-14歳 |
0 | - |
- |
6月4 〜 10日 |
23週 | 0 | 0 | 0 | 0 |
6月11 〜 17日 |
24週 | 2 |
0 | 0 | 0 |
6月18 〜 7月22日 |
25〜 30週 |
0 |
0 | 0 | 0 |
2007年の累計 | 10例 | 0例 | 13例 | 0例 | |
累計 | 10例 | 4例 | 16例 | 11例 |
<麻しんの特徴等>
麻しんに対して免疫を持たない者が感染した場合、10日前後の潜伏期を経て発症し、発熱・咳・鼻水・眼脂・結膜充血等のカタル期(2〜4日)、発疹期(3〜5日)、回復期へと続いていきます。感染期間としては、カタル期から発疹後4〜5日までウィルスの排出の可能性があります。
なお、患者との接触から3日以内であれば、麻しんワクチンの接種により感染を予防できる可能性があります。早期診断と接触者への迅速な対応が重要です。
<市民のみなさま・特に子育て中の保護者のみなさまへのメッセージ>
上記のとおり、現状では、和歌山県内・市内とも各地で散発事例が認められているものの、際立った流行は認められておりません。
麻しんの予防には、予防接種の徹底が何より重要です。【Stop 麻しん・風しん】を参照
お子様が満1歳になりましたら先ず麻しんワクチン(=麻しん・風しん混合ワクチン)を接種しましょう。また、就学前の1年間の2回目の接種も忘れずうけましょう。
<若年成人の方へのメッセージ>
ワクチン接種率が向上し,罹患者は減ったものの,接種漏れなどで免疫のない人がかかると重症化する恐れがあります。現在の20歳代及び10歳代後半の若年者は、ワクチンの接種率が低く、また、接種者でも接種から10年以上が経過しているため、抗体価が低下して場合もあるため、感染者が多くでています。接種歴のない方や抗体価が低い場合は、ワクチン接種が必要です。
しかし、現在全国的にワクチンが不足しており、増産にも時間(約6か月)を要するため、すぐには確保が困難な状況に陥っています。
現状では、何より乳幼児の定期のワクチン接種を最優先するとともに、感染者があった場合の濃厚接触者への感染拡大防止のためのワクチンの確保が重要です。ワクチンの供給が潤沢になるまでは、当面任意接種は見合わせましょう。
また、発熱等の症状があった場合には、医療機関を受診し、診断をうけましょう。発熱等があるときに無理して職場や学校等へ行くことは、感染性の疾患であった場合、感染拡大につながりますので控えてください。
<全国の状況>
IDWR第17〜21週では、全国の小児科定点約3,000か所からの麻しんの報告数は約200例と大幅に増加し、2004年以降の最高値となっていました。
2007年第1週〜21週の累積報告数は1121例で2004年以来3年ぶりに1000例を上回りました。関東地域が中心ですが、全国的な拡がりを見せていました。その後報告数は3週連続で減少しており、IDWR26週では、106例でした。
「感染性胃腸炎」は小児に好発するロタウィルス腸炎やノロウィルス感染症にみられるように,冬季〜春先に大流行します。例年40週後半を過ぎた当たりから急激に増加を始め年末にピークを迎えます。2006年は、全国的に例年より立ち上がりが早く、第46週時点で1定点あたり19.80と1981年の調査開始以来最高を記録しました。
和歌山市でも、2006年は、第49週に373例(定点当り41.44)と過去最高の報告数となり,第46週から52週まで警報発令が続きました。
2007年第1週では58例(定点当り6.44)まで減少し、警報は解除されて第8週までほぼ横ばい状況で、過去8年間の中でも最も少ない状況が続いていましたが、第9週161例,第10週179例,第11週187例(定点当り20.78)と増加が続き、警報が発令されました。第14週に80例(定点当り8.89)に減少し、ようやく警報は解除されましたが、第15週以降、100例を越える報告が続いています。第28週は59例(定点当り6.56)、第29週・第30週は34例(定点当り3.78)と減少傾向から横ばいにあり、まだまだ注意が必要です。
梅雨時期になり、より警戒が必要となってきますので十分に注意してください。
年齢別では、乳幼児・小中学生で報告がみられますが、成人も注意が必要です。
県内でも、和歌山市が特に多い状況です。
日常生活における予防としては、「手洗い」「うがい」励行などを日ごろより心がけて下さい。また嘔吐・下痢などの症状があるときには、十分に水分補給をして下さい。ノロウィルスには塩素系の消毒剤が有効です。嘔吐物や下痢便の処理は衛生的に取り扱い、汚れた場所や衣類等は熱湯や塩素系消毒剤で消毒しましょう。乳幼児や高齢者等集団生活の場では、感染拡大の防止に心がけましょう。
2007年は、第7週46例(定点当り5.11)に急増し、警報が発令されました。過去最高の報告数でした。以後,急速に減少し,第10週以降10例前後で推移していました。第19週は18例(定点当り2.0)とやや増加し、しばらく15例前後の報告が続いていましたが、第25週以降は例年並みに減少し落ち着いています。第30週は4例報告されています。
年齢別では、7〜8歳、15〜19歳でした。
本感染症では,治療が十分に行われないと腎炎,リウマチ熱を発症することがあるので,早期診断,適切な治療が特に必要とされています。
2007年第1週では74例(定点当り8.22)に急増し、警報が発令されました。以降,増減しつつ,漸減傾向でした。第14週には41例(定点当り4.56)と再増加し,再度注意報発令されましたが、第15週は18例(定点当り2.0)に減少し注意報は解除されました。以降、19例、22例、10例、27例、13例(定点当り1.44)で、例年並でありましたが、第21週は34例(定点当り3.78)と増加しましたが、その後減少傾向でしたが、第30週は13例と増加に転じています。
年齢別では、乳幼児期を中心に学童期でもみられています。
流行性耳下腺炎は約4年ごとに増える傾向がみられています。
和歌山市では,2006年では第10週をピークに流行が続きましたが、第19週以降漸減しています。
2007年では第15週までの期間1〜11例を推移していましたが、その後は5例以下と例年以下の状況が続いています。第30週は報告されませんでした。
小児科定点からの全国の「風しん」患者数は,2004年に一部の地域(群馬県,大分県,鹿児島県,宮城県,埼玉県など)で多く報告されました。全国3000の小児科定点医療機関から第20週243例,定点当り0.08人の報告で感染症法施行以降最高値となりました。
患者の年齢別では,2004年では以前と比較して10〜14歳及び20歳以上の割合が明らかに大きくなっています。これらは小児科定点からの報告であるため,実際の成人の風疹罹患数はより多い可能性があります。
一方,ワクチン未接種で罹患したこともない女性が妊娠初期に風疹に罹患したときにウィルスが胎児に感染し,出生児に「先天性風疹症候群」を起こすことがあります。この先天性風疹症候群は「感音性難聴」,「白内障または緑内障」,「心疾患」が3主徴で,通常妊娠第16週までに起ることが殆どです。
感染症法では,「先天性風しん症候群」は全数把握となっていますが,いままで1年に全国で1例以内だったのが,2004年では,9例の報告がありました。
和歌山市内では1999年以降,「先天性風疹症候群」の報告はありません。
また,「風疹」は,和歌山市内では,2004年7例,2005年4例の報告でした。
非流行時から妊娠可能年齢の女性の積極的な予防接種が重要です。また,流行阻止のために,男女とも,ワクチン接種歴がなく,罹患もしていない人は,男女とも予防接種(任意接種)を受けることが望まれます。